学芸員エッセイ その13 「薩長土フォーラム」

薩長土フォーラム

 7月28日、高知市立城西中学校で「平成の薩長土・中学生フォーラム」が行われた。

これは、今年が坂本龍馬生誕180年、来年は薩長同盟成立150年を記念して高知市などが主催したイベントで、鹿児島県と山口県、そして高知県の中学生の代表が龍馬の故郷に集まり、そこで学習と交流を深めるというものである。筆者は、このイベントに参観させていただいた。

 フォーラムは、薩長土の生徒たちがパワーポイントを使ったプレゼンテーションを行う形で進行した。まず、「各地域のふるさと・偉人紹介」と題して、それぞれの地方の特色や名産、歴史上の人物が紹介された。鹿児島や山口の歴史観光をしたことがない筆者にとって、知らないことも多々あり、たいへん興味深い内容であった。このように、中学生が故郷の産業や歴史について自分から学び、その継承活動の一端を担っていくのは、たいへん素晴らしいことだ。地元の魅力というものは住んでいる時にはなかなか気づきにくく、「進学や就職で離れてみて、はじめて故郷の良さを知った」というケースも少なくない。義務教育のうちから郷土に対する勉学を深めることは、非常に大切である。

 その後、プレゼンテーションは「訪れたくなるふるさと」「私達にできること」というテーマで、それぞれの中学生が故郷の観光スポットとともに、「どうすれば、もっと観光客の方に喜んでいただけるか」「どうすれば、さらに地域のPRが図れるか」ということを中学生ならではの視点や発想から提案され、その意識の高さに一人の大人として感心したものである。机上の空論だけでなく、中学生自身が史跡マップを作ったり、案内役を受け持ったりと実践に移している取り組みも多く、その積極性に感動すら覚えた。観光客の方々に気持ち良くすごしていただくために、清掃活動に関わっているという話も印象に残った。実に、将来が楽しみな子どもたちである。

 幕末史において、薩摩、長州、土佐は大きな働きをした。もちろん、この三藩だけで明治維新を語ることはできないが、龍馬が結んだ薩長同盟が新しい時代を切り開いたことは間違いない。そして2015年、この土佐において鹿児島、山口、高知の子どもたちが語り合い、親睦と勉学を深め合いながら、これからの観光産業などに携わる力を磨いた。是非とも、今回のイベントを一過性のものに終わらせず、未来につなげる糧としていただきたいものである。


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