学芸員エッセイ その14 「上町・小高坂の偉人達」

上町・小高坂の偉人達

 龍馬の生まれたまち記念館では、11月18日(水)~来年1月11日(月)の期間中、「偉人がいっぱい!上町・小高坂の群像展」を行う予定である。

これは、龍馬の生まれた高知市上町及びそれに隣接する小高坂出身で、幕末から現代までに活躍した人物を紹介する企画展だ。龍馬以外にもこの地域にはこれほど偉人がいたのかと、驚いていただけるような展示にしたい。

 今回は、人物をただ列記するだけでなく、子どもから大人まで楽しんでいただけるようなエンターテインメント的な演出を加えたいと考えている。その一環として、偉人達をモチーフにしたキャラクターを学芸員がつくり、そこから人物像を読み解くという手法を思いついた。
 今回のエッセイでは、それを2つ紹介する。

オオリックス
学芸員エッセイ 「上町・小高坂の偉人達」①

 上町本丁筋出身の土佐勤王党の志士・大利鼎吉(おおり・ていきち)とウシ科の動物「オリックス」を融合させたキャラクターである。オリックスはその優美な姿から伝説獣ユニコーンのモデルとも言われているが、ここでは討幕に向けて戦った大利の荒々しさをデザインに組み込んだ。ぜんざいの中に入っている姿は、大利が遭遇した「ぜんざい屋事件」に由来、胴体と鼻息は餅をイメージしている。(同事件の詳細は、当ホームページの1月25日付の学芸員エッセイ を参照)
 大利は、池田屋事件や禁門の変に参加し、幕末の激戦を何度か経験した人物である。その後、大坂の甘味処「石蔵屋」に潜伏し、討幕に向けて計画を練っていたが、慶応元(1865)年1月8日に新選組の襲撃を受ける。この時、店内にいたのは大利と店主だけであり、他のメンバーは外出中であった。結果、4人の新選組メンバー相手に孤軍奮闘することとなり(店主は脱出に成功)、闘死した。写真は、大阪市に残るその跡地を示す石碑である。
学芸員エッセイ 「上町・小高坂の偉人達」②

 大利らを襲撃した新選組のメンバーは、谷三十郎・万太郎の兄弟と正木直太郎、高野十郎である。三十郎は、新選組七番隊のリーダーとしても知られる人物で、池田屋事件などでも活躍した。万太郎は、この事件後、新たに設置された大坂屯所で隊長を務めることとなる。

カメヤタートル
学芸員エッセイ 「上町・小高坂の偉人達」③

 同じく新選組に討たれた人物で小高坂出身の「望月亀弥太」を基にしたキャラクターである。亀弥太の「カメ」に加えて、「望月」から「ウサギの餅つき」のモチーフも融合して製作した。まさにウサギとカメの合成獣である。
 亀弥太が襲撃されたのは、有名な「池田屋事件」である。亀弥太は、文久元(1861)年、土佐勤王党が結成されると兄・清平とともに加盟したとみられている(同党の血盟書には名前がない)。翌年、前藩主・山内容堂を護衛して江戸に行き、その後、神戸海軍塾で勝海舟の門下となり、龍馬らとともに海軍の技術を学んだ。だが、激動する時世、亀弥太は長州の過激派と交わってしまった。この行動が、やがて池田屋の悲劇に巻き込まれることとなる。(写真は、京都市にある「池田屋騒動の跡」)
学芸員エッセイ 「上町・小高坂の偉人達」④

 元治元(1864)年6月5日に起きた同事件は「明治維新を1年遅らせた」とも言われており、亀弥太らを負傷させ、最終的に自決に追い込んだ新選組は、後の世に「壬生の狼」と呼ばれた。群れを成したオオカミの牙に、ウサギもカメも切り裂かれたというわけである。
 なお、カメは英語で「turtle(タートル)」と「tortoise(トータス)」の2種類がある。前者は主に海ガメ、後者は陸ガメを指すらしい。亀弥太が過激路線に走らずにそのまま龍馬とともに神戸海軍塾で学んでいれば、よき船乗りになっていた可能性がある。その時は、「土佐の海亀」と呼ばれていたかもしれない。

 他にも、上町・小高坂の地域には、土佐勤王党員をはじめ幕末の激動に関わった人々が大勢いた。龍馬だけでなく、彼ら一人ひとりが、歴史の担い手であり、明治維新の功労者であったといえよう。
 また、維新後も、数多くの人材が同地域から生まれている。外食産業に大きな功績を残した松岡寅八、魚類分類学の開祖とも言われる科学者・田中茂穂などがその代表例だ。『高知県人名事典』で上町・小高坂ゆかりの人物をピックアップしてみると、その人数と功績の種類には驚くべきものがある。おそらく、1回の企画展では取り上げきれないので、再来年あたりに続編を開催しようと、今から計画しているくらいだ。

 繰り返しになるが、企画展「偉人がいっぱい!上町・小高坂の群像展」は今年の11月18日(水)~来年1月11日(月)まで、龍馬の生まれたまち記念館で開催予定である。ぜひお越しくださいませ。


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