学芸員エッセイ その2 「企画展を終えて」

企画展を終えて

 7月26日から当館で開催されていた企画展「龍馬のふるさと展 ~鏡川~ 水都・高知城下の今昔」が2日間の延長を経て8月26日に終了しました。ご来館くださった皆様、資料提供等でご協力いただきました皆様にこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。

 
 今夏の企画展を経て、鏡川という身近な自然から学芸員として多くのことを学びました。想像以上に豊かな生態系が存在することや、オリンピックとの関係、博覧会の存在など、詳しく知ったのは初めてのことが多々ありました。美しい自然と深い歴史が存在する鏡川は、まさに高知市が全国に誇れる川といえるでしょう。

 しかし、開催中は例年にないくらいに天候に恵まれず、ほとんどが雨天で、館職員としても労苦を伴った企画展でもありました。特に、8月初めの大雨と台風の時は、普段は美しい鏡川が濁流になり、氾濫寸前となるほどの姿を見せました。今回の企画展の準備にあたって分かったのですが、鏡川は、原始~古代においては「暴れ川」であり、同じ高知県内の仁淀川や四万十川に比べて、周辺に遺跡は少ないそうです。本格的に高知城下、現在の高知市中心部に都市が形成されてきたのは近世以降で、その要因として優れた治水技術がありました。つまり、鏡川とともに歴史を刻んできた人々は、自然と共存してきただけでなく、時に戦いながら生きてきたわけです。

 今夏の大雨や台風で、増水した鏡川が全国ニュースでも取り上げられ、自然の脅威を思い知らされました。同時に、その自然と向き合ってきた先人たちの知恵と努力を知るとともに、今回の災害にあたって尽力された行政や市民の皆様を見て、それはまさに現在進行形でもあることも実感しました。

 私たちは、美しい鏡川を守っていく心を子々孫々に継承していかなければなりません。同時に、自然の恐ろしさを忘れず、それと対峙していく姿勢も代々伝えていかねばならないことでしょう。


このページのTOPへ

カテゴリー: ブログ  タグ:  

« | トップページ | »