【企画展のみどころ 其の②】周布政之助暴言絵巻について
公開中の史料 其の② 周布政之助暴言絵巻
企画展「群像から見る幕末史vol.3 龍馬と長州藩 時代の激流の中で」好評開催中です。先日に続いて、本企画展で公開中の史料をご紹介します。
長州藩重役・周布政之助(すふ・まさのすけ)が土佐藩からの使者に暴言を吐いたことで、両藩士間に対立が生じた事件が文久2(1862)年11月にありました。その顛末を描いた絵巻がこちらです。
「梅屋敷事件」と呼ばれるこの騒動は、同月12日、攘夷に燃える長州藩士・高杉晋作、久坂玄瑞らが、横浜の異人館を襲撃するため品川を発したことに始まります。翌日、この情報を得た土佐藩の最高権力者(前藩主)・山内容堂は、長州藩主の息子・毛利元徳に急報しました。藩士の「暴発」に焦った元徳は、蒲田(現・東京都大田区)の梅屋敷で高杉らと会って説得し、それが功を奏して計画は中止となります。
その際、土佐藩から4名の使者が、「見舞い」として蒲田に派遣されたのですが、彼らが到着した頃には一件落着となっており、梅屋敷で宴席が開かれました。しかし、その帰路に酔った周布が、使者に対し容堂を侮辱する発言をしたのです。怒った使者たちは、翌日、周布宅に抗議に行きましたが会うことができず、代わりに元徳が応対しました。元徳は、その夜に土佐藩邸に至り、容堂に謝罪することで、この事件は終結しました。
この絵巻物は、周布に暴言を浴びせられた土佐藩からの使者の一人である諏訪重中が、明治39(1906)年、事件を語る際に作ったものと思われます。これを作成する以前に、諏訪は解説付きの画巻を書いており、彼が事件を回顧した談話や講演記録も確認されています。本展示では、それらに基づいて、かつて高知県立歴史民俗資料館が解読した成果をもとに、説明キャプションを製作しました。
ただし、事件の詳細に関しては、各資料によって異なる部分があります。この絵巻も、通説と異なる箇所(周布が暴言を吐いた時期など)があり、史実を忠実に再現したものではない可能性があります。その前提でお楽しみください。
なお、梅屋敷事件に関しては、『土佐史談』187号「周布政之助の容堂誹謗―梅屋敷事件の真相―」(横田達雄氏)に詳細な研究成果が書かれています。本展のキャプション作製は、前述の歴史民俗資料館の調査に加えて、この論文を参考にしました。
企画展「群像から見る幕末史vol.3 龍馬と長州藩 時代の激流の中で」は、2020年2月2日(日)までの開催です。皆さまのご来館を心よりお待ちしております。
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企画展「群像から見る幕末史vol.3 龍馬と長州藩 時代の激流の中で」
【開催期間】開催中~2020年2月2日(日)
【開館時間】8:00~19:00(最終入館時間18:30)
【場 所】2階ふれあいホール
【入 館 料】300円(高校生以下は無料)※常設展観覧料を含む